Close-Up ESPEC
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2012
新たな技術分野の開拓に取り組む
大阪大学 菅沼研究室を訪問 -
持続可能な未来に向けた研究開発
今回の特集では、社会を豊かにし産業の発展に貢献する先端技術の研究と当社とのかかわりをご紹介します。大阪大学産業科学研究所・菅沼研究室を訪問し、プリンテッド・エレクトロクス技術の実用化に向けての研究やパワー半導体の信頼性評価の研究についてお話を伺いました。今後の日本の産業を切り開くと期待されているこれらの研究分野においても当社の試験装置が使用されています。
省エネルギー、省資源に向けて動き出したプリンテッド・エレクトロニクス技術
菅沼研究室では世界に先駆けてプリンテッド・エレクトロニクス(印刷デバイス製造技術-以下PE)の実用化の研究に取り組んでおられますが、PEとはどのような技術でしょうか
PEは印刷技術を活用し電子回路やセンサなどエレクトロニクス製品を製造する技術です。紙や布など柔らかい素材を基板に、電子デバイスを製造することが可能になります。現在、ほとんどの半導体やディスプレイは、光学写真技術(フォトリソグラフィ)を用いて配線パターンを描きますが、PEはインクジェットプリンタやオフセット、グラビアといった印刷技術で、配線やさまざまな電子デバイスを描きます。
PEを用いた電子デバイス/柔らかい素材にも電子回路が作れます
PE技術が普及すると、私たちの社会や産業はどのような変化があるのでしょうか
携帯電話や液晶テレビはさらに薄くなり高性能化するでしょう。携帯電話はケースの中に電子デバイスが入っているのではなく、ケースそのものに電子デバイスを印刷した構造になります。太陽電池の生産コストは大幅に下がり、各家庭の屋根や外壁にソーラーパネルが設置されるようになるでしょう。また、ヘルスケアの分野では、服に印刷されたアンテナや医療検査の機能を通じて一日の健康状態をチェックし、そのデータを医者に届けることも可能になります。紙や布などの柔らかい素材を基板に電子デバイスを製造することも可能なため、有機EL照明カーテンや電子ペーパー(新聞・書籍)の実用化がすでに進んでいます。
PEの実用化に向けて菅沼研究室ではどのような研究に取り組んでおられるのですか
電気を通しやすい銀をインクとして利用するため超微細粒子にした「金属ナノインク」の開発に取り組んでいます。PEでは金属粒子を含むインクを印刷した後、熱処理によってインク内の金属粒子を焼結させて導電性を持つ配線を形成します。この配線形成において熱処理が必要ですが、耐熱性の低い樹脂基板への適用が難しいとされていましたが金属ナノインクにより低温処理が可能となりました。
PEは、環境調和性が高いと期待されているのはどういう理由でしょうか
PEは光学写真技術を用いた半導体製造よりも、工程が単純なため設備投資が小さく製造設備のスペースが小さく済みます。従来の半導体製造プロセスで用いられる露光・エッチングが不用なため、化学物質や水の使用の低減が期待できます。つまりPEは省エネ・省資源の電子デバイスを低コストで製造することができ、環境調和性が高く低炭素社会への貢献が期待できます。
PEの実用化に向けて信頼性評価はどのように行っているのですか
PEで製造された電子デバイスの実用化に対して、信頼性評価技術の短期解決は不可欠です。そのため、PEで製造された電子回路に対して、絶縁信頼性評価や接続信頼性評価を行っています。例えば、有機ELや電子ペーパーなどPE技術で印刷した製品を高温高湿試験、温度サイクル試験を行う必要があります。私たちの研究室ではこれら試験を確実に実施できるエスペックの試験装置を使用しています。
プリンテッド・エレクトロニクス技術の信頼性評価に使用されるエスペック製品
恒温(恒湿)器プラチナスJシリーズ
エレクトロケミカル マイグレーション
評価システムと小型環境試験器
導体抵抗評価システムと冷熱衝撃装置(TSAシリーズ)