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TCFDへの対応(TCFDに基づく情報開示)

当社は、気候変動がもたらすリスクおよび機会の財務的影響を把握し開示することを目的とした「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)※」の提言への賛同を表明し、気候変動に関する情報の適切かつ積極的な開示に努めています。

※Task Force on Climate-related Financial Disclosures.
金融安定理事会(FSB)により2015年に設立

ガバナンス

気候関連リスクと機会にかかわるガバナンス

エスペックグループの主力事業である環境試験事業(販売・サービス・受託試験)は、使用時のエネルギー消費に起因するCO2排出量が大きく、冷凍機に冷媒として使用されているフロンは気候変動に影響を与えます。当社事業が気候変動に与える影響は大きいと認識しています。また、グループ会社であるエスペックミック株式会社が展開する環境保全事業等では、気候変動により直接的にも間接的にもさまざまな影響を受けます。気候変動問題は、当社の中長期的な事業リスク・機会に大きな影響を与えると考えています。

当社は「持続可能な社会の実現のために事業で貢献する環境経営」を目指しており、この考えに基づいて環境保全上のマテリアリティ(重要課題)を特定しています。まず、事業活動のどの段階でどれくらいの環境負荷が発生しているかを「環境影響評価」で評価・把握し、課題を抽出しています。さらに、外部・内部の課題の分析、主たる事業拠点が立地する地域(行政)・地域住民、顧客、供給者(取引先)、従業員、投資家などのステークホルダーからのニーズと期待を整理しています。その結果抽出された課題と、中期経営計画との整合を図り、環境保全上の重要課題を環境中期計画に落とし込んでいます。
第8次環境中期計画では、地球温暖化対策と生物多様性を経営上の重要な課題として掲げており、低炭素技術開発分野への製品・サービスの提供や、環境配慮型製品の開発・提供、事業活動におけるCO2排出量の削減などに取り組み、環境経営をさらに推進してまいります。

当社では、1996年度より代表取締役 執行役員社長を委員長とする全社環境管理委員会において、四半期ごとに当社グループの環境課題に対する実行計画の策定と進捗モニタリングを行っています。代表取締役 執行役員社長は、「執行役員会」の議長を担うと同時に、諮問委員会である「全社環境管理委員会」の委員長も担っており、環境課題に係る経営判断の最終責任を負っています。「全社環境管理委員会」では全社共通の目標管理、各種案件の審議などを行っています。ここでの決定が、それぞれの会社、事業所、事業部に展開され、活動が推進されます。
取締役会は、四半期ごとに「全社環境管理委員会」で協議・決議された内容の報告を受けることで、当社グループの環境課題への対応方針および実行計画等についての議論・監督を行っています。

戦略

事業・戦略・財務に対する気候関連リスクと機会の影響

環境試験器の需要は、カーボンニュートラル社会に向けた環境配慮技術の開発が進むことにより、今後増加すると予測しています。また、キガリ規制など冷媒を使用する空調機器や冷凍機搭載機器の需要の増加によって、各国政府は空調に伴うエネルギー規制や、温室効果の高い冷媒に対する規制を強化する可能性があります。過度な規制強化は当社にとってリスクとなり得ます。一方、適正な規制は、当社が強みとする環境性能に優れた製品・サービスの普及拡大を後押しし、事業拡大の機会となり得ます。環境配慮技術を世界に先駆けて開発する欧州やASEANなどを中心に当社の環境配慮製品・サービスを普及させていくことが、世界の温室効果ガス排出抑制に向けた有効な施策であり、かつ、当社事業の成長につながると考え、事業戦略に反映しています。

当社は、1996年から環境中期計画を設定し、これまでもCO2排出量削減に取り組んできました。昨今の社会的要請の高まりを受け、2022年4月に「第8次環境中期計画」を定め、2030年のCO2排出量(SCOPE1+2)削減目標を60%減(2019年度比)と設定しました。

その実現のため、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が第6次報告書で公表したSSPならびに第5次報告書で公表したRCPシナリオなどを考慮し、下記のとおり事業活動に与える気候関連のリスク(物理リスクおよび移行リスク)と機会を抽出し、対応策の有効性およびレジリエンス(強靭性)を検証いたしました。

第8次環境中期計画では、日本政府がめざす2050年カーボンニュートラルに賛同し、省エネ製品や低GWP冷媒採用製品の拡販、グローバル事業所でのさらなる省エネ活動と再生可能エネルギー100%での受託試験サービスの提供などに取り組んでまいります。

<シナリオ分析の詳細>

使用シナリオ

  • 4℃シナリオ:IPCC AR6 SSP3:共通社会経済経路(Shared Socio-economic Pathways )および AR5 RCP8.5代表濃度経路シナリオ(Representative Concentration Pathways)
  • 1.5もしくは2℃シナリオ:IPCC AR6 SSP1共通社会経済経路(Shared Socio-economic Pathways)およびIPCC AR5 RCP2.6代表濃度経路シナリオ(Representative Concentration Pathways)

気候関連リスク・機会に対する事業インパクト(財務影響と事業リスク)評価と当社の対応

左右にスクロールしてご覧ください。

分類
リスク項目 事業インパクト 事業機会 当社の対応
大分類 小分類 財務影響 影響 事業リスク
移行リスク(1.5℃~2℃シナリオ)
政策・
規制
フロンガス規制 ★★★ 短・中期
  • フロン使用製品の売上減少
  • 早期対応による事業機会獲得
  • 情報収集と共有
  • 低GWP製品開発、上市の加速
  • 産官学連携による製品開発
  • フロンガス交換サービス
  • ノンフロン発泡によるウレタンフォーム製造
短・中期
  • 低GWPフロンガスのコスト増加
技術 新製品・サービス開発 ★★★ 短期
  • 開発失敗による開発コストおよび事業機会の喪失
  • グリーンテクノロジーの開発が進み、環境配慮製品、部品の増加による受託試験増加
  • 多様な試験基準への対応
  • 受託試験ワンストップサービス
炭素税引き上げ ★★★ 中期
  • エネルギー調達コスト増加
  • 原料、半製品調達コスト増加
  • 製品価格上昇による売上減少
  • 早期対応による事業機会獲得
  • 再生エネルギー由来電力使用によるコスト安定化
  • 省エネルギー、創エネルギー
  • 森林吸収を目的とした植栽事業拡大
  • SBTに基づく二酸化炭素排出量目標の設定と着実な実行
  • 再生可能エネルギー由来電力の使用
  • FEMSを活用した省エネ
  • ソーラーパネルの設置
省エネ・低炭素規制 ★★★ 短期
  • 省エネ対応への設備導入コスト増加
  • 省エネ・低炭素規制対応製品の売上機会増加
  • 省エネ製品開発ロードマップの策定と推進
  • 環境投資枠への積極的な支援
  • 自家発電比率向上による再エネ調達コストの安定化
低炭素規制 ★★★ 短期
  • 再生可能エネルギー導入コストの変動リスク
評判 受託試験の増加 ★★ 短期
  • 受託試験増加によるエネルギーコスト増加
  • ゼロエミッション試験による事業機会の獲得
  • 省エネを指向した試験法の検討
  • 再生可能エネルギー由来電力使用
ステークホルダー評価 ★★★ 中・長期
  • 脱炭素を目指さない企業への評価低下
  • 積極的対応による事業機会獲得および資金調達の安定化
  • Sustainability Report、CDP などでの情報開示
  • 再生可能エネルギー由来電力使用
市場 顧客の要求変化 ★★★ 中・長期
  • エネルギー多消費製品の売上減少
  • フロン使用製品の売上減少
  • 早期対応による事業機会獲得
  • 省エネ製品開発、上市の加速
  • 低GWP製品開発、顧客への訴求
訴訟 有害物質やフロンガスの漏洩 中期
  • 有害物質やフロンガス漏洩による訴訟
  • 製品リサイクルサービスによる製品含有化学物質の適正除去と廃棄
  • フロンガス回収サービスによる事業機会獲得
  • 製品含有化学物質の含有位置の特定と、適正廃棄のためのリサイクルサービスの運営と推進
  • フロン漏洩に関する注意喚起
  • フロン回収サービスの提供
物理的リスク(4℃シナリオ)
急性 台風・洪水・旱魃などの強大化、頻発 ★★★ 中期
  • 工場操業の停止による売上減少
  • 部品調達遅延による売上減少
  • 洪水による植物性商材の流失
  • 自然災害対策コスト増加
  • コロナ対策による車使用増加
  • 保険料の増加
  • サプライヤーとの協働機会増加
  • 植物工場の売上増加
  • 自然災害リスクの把握と対策実施
  • 植物工場の拡販
慢性 化石燃料コストの増加 ★★ 中期
  • ガソリン・都市ガスなどSCOPE1排出に関連するエネルギーコストが2.5倍になりコストが増大
  • GHP→EHPへの切り替え
  • EV車の積極的な採用
降水パターンの変化 ★★ 中期
  • 工場操業の停止による売上減少
  • 景観保全繰延による売り上げ減少
  • 生産拠点のバックアップ体制構築
飲料水の悪化 ★★ 中期
  • 不衛生な飲料水による疾患発生
  • 感染症による工場の操業停止・納期遅延
  • 衛生的な水、トイレの確保
  • 労働安全衛生教育の推進
平均気温の上昇 ★★ 長期
  • 熱中症の発生
  • 冷房コストの増加
  • 製品使用条件の悪化
  • 熱中症への注意喚起
  • 省エネ型空調機への入れ替え検討
  • 製品使用保証条件の変更の検討
水不足 ★★ 長期
  • 植物工場に供する水の不足
  • 受託試験場に供する純水の不足
  • 植物性商材の枯死、生長不良
  • 水不足、気温上昇に耐性を持つ植物の提案による事業機会獲得
  • 各事業場の水リスクの把握
  • 水不足、気温上昇に耐性を持つ植物の検討

影響時期:短期10年以内、中期10年~30年、長期30年超
財務影響度:1億円以内、★★1億円~10億円、★★★10億円超

リスク管理

当社では、リスク管理委員会と全社環境管理委員会および環境マネジメントシステム(ISO14001)で上記に記載した気候関連のリスクを管理しています。

リスク管理のプロセスとしては、リスク管理委員会と全社環境管理委員会および環境マネジメントシステム(ISO14001)にてリスクの識別・評価を行い、発生頻度やインパクトから優先順位付けした上で、回避・軽減・移転・保有などの対策を決定し、進捗管理を行います。重要リスクについては定期的に取締役会に報告され、取締役会による監督体制の下、当社グループの戦略に反映し、対応しています。

指標と目標

気候関連リスクと機会を評価・管理するための指標と目標

(a)気候関連リスク・機会の管理に用いる指標

当社は、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、SCOPE1・2およびSCOPE3温室効果ガス排出量の2つの指標を定めています。

(b)温室効果ガス排出量(SCOPE1・2・3)

当社は、2019年度から、グループ全体の温室効果ガス排出量の算定に取り組んでいます。当社グループの2022年度SCOPE1・2温室効果ガス排出量は、7,293t-CO2e(対2019年度48.2%減)でした。また、2022年度SCOPE3温室効果ガス排出量は、約1,098,905t-CO2e(対2019年度比35.1%増加)でした。
当社グループは、2019年度から、温室効果ガス排出量の第三者保証を取得しており、2022年度の温室効果ガス排出量についても、第三者保証を取得済です。

温室効果ガス排出量報告書

(c)気候関連リスク・機会の管理に用いる目標および実績

当社では、2030年までの温室効果ガス排出量削減目標を4年ごとに設定する「環境中期計画」に展開し、環境目的・目標に落とし込みを行い、地球温暖化対策を含む環境活動の進捗を管理してまいります。

SCOPE1・2:グループ全体の事業活動に起因する温室効果ガス排出量
2030年60%削減(2019年度比)
→第8次環境中期計画 2025年55%削減(2019年度比)

SCOPE3:販売した製品の使用(カテゴリ11)+販売した製品の廃棄(カテゴリ12)の温室効果ガス排出量
2030年30%削減(2019年度比)
→第8次環境中期計画 2025年排出量 10%削減(2019年度比)