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  • 代表取締役
    執行役員社長
    荒田 知

中期経営計画「PROGRESSIVE PLUS 2027」をスタート
筋肉質で持続可能な高利益体質の確立を目指す

「環境創造技術」をかなめとした事業で社会課題の解決に貢献

エスペックは「環境創造技術をかなめに展開するサービス」による「より確かな生環境の提供」を使命(ミッション)としています。私たちの事業の核となるのは、地球上のさまざまな気象環境を再現する「環境創造技術」です。当社は、世界のお客さまにこの技術を駆使した製品・サービスを提供することにより、より豊かで安全・安心な社会の実現に貢献したいと考えています。これが私たちの存在意義(パーパス)であり、これからも変わることのない価値観です。
昨今、気候変動は深刻さを増しており、世界の平均気温は観測史上で過去最高を更新し続けています。また、地政学リスクの増大や人口・資源問題など、さまざまな社会課題が山積しています。一方で、AI半導体やクルマの自動運転、衛星通信分野をはじめとする先端技術の開発は活発化しており、こうした先端技術は、現代社会が抱えるさまざまな課題の解決に寄与すると期待されています。エスペックは、創業の精神である「プログレッシブ(進取的)」を発揮し、先端技術の実用化や安全性・信頼性確保に不可欠な製品・サービスを提供することで、社会課題の解決に貢献するとともに、さらなる企業価値の向上を図っていきたいと考えています。

前中計「PROGRESSIVE PLAN 2025」1年前倒し達成

当社は、中期経営計画「PROGRESSIVE PLAN 2025」(計画実施期間:2022~2025年度)において、中期目標として2025年度売上高650億円、営業利益75億円、営業利益率11.5%、ROE10%以上を掲げて取り組んできました。社会のデジタル化・脱炭素化を背景に需要が拡大したEV・バッテリー分野において、お客さまの試験ニーズを的確に捉えるとともに、部品調達難への対応や製品・サービスの値上げ、生産能力の増強といった事業環境の変化に応じた対策を実施。その結果、2024年度の業績は過去最高を更新し、売上高は672億円、営業利益は75億円、営業利益率11.2%、ROE 11.0%となり「PROGRESSIVE PLAN 2025」の目標を1年前倒しで達成できました。
前中期経営計画では、こうした業績拡大をはじめさまざまな成果を上げることができましたが、一方で克服すべき課題も残っています。それは、製品の付加価値向上やモノづくりの高効率化、人的資本の強化といった持続的な成長に向けた「質の向上」です。業績は過去最高を更新できたものの、「質の向上」に対して十分な取り組みができなかったことは、反省すべき点だと考えています。2025年度よりスタートした新中期経営計画では、この「質の向上」に重点を置いた取り組みを進めていきます。

■「PROGRESSIVE PLAN 2025」 目標と実績

PROGRESSIVE PLAN 2017 PROGRESSIVE PLAN 2021 PROGRESSIVE PLAN 2025

※2018年度は海外連結会社の決算期間が15カ⽉の変則決算、
( )は海外連結会社の決算対象期間が12カ⽉であった場合の参考値

新中計「PROGRESSIVE PLUS 2027」策定 2027年度を見据えた環境認識

2027年度を見据えた環境認識(SWOT分析)についてご説明します。内部環境としての当社の強みは、環境試験器業界でのブランド力やトップシェア、グローバル企業への長年の納入実績・信頼関係にあると考えています。また、お客さまのさまざまなニーズに応える豊富な製品ラインアップやカスタム対応力、グローバル体制も競争優位性であると認識しています。一方で、急激な受注拡大への対応による業務効率の悪化や、製品開発、技術・技能の伝承の遅れなどに弱みがあると考えています。外部環境としては、AI半導体や自動運転、衛星通信などの先端技術分野の開発が加速しており、これに伴う試験需要は拡大すると予測しています。また、労働人口の減少や試験の高度化を背景に、試験業務を外部に委託する傾向が強まっていることも当社の事業機会です。一方、米中対立による世界経済の低迷や、中国・台湾企業との価格競争の激化、EV・バッテリー向けの投資減速を懸念しています。米国の相互関税政策の影響については、当社は米国に子会社があり、現地生産比率が高く、米国・中国間の貿易もほとんどないことから、直接的な影響は軽微であると考えています。間接的な影響としては、世界経済の低迷による投資抑制が懸念されるものの先端技術開発の投資は続くと考えており、引き続き影響を注視し、グローバルな総合力で適切な対応を行っていきます。

「質の向上」と「利益成長」により筋肉質な企業体質へ

当社は、現在策定中の2035年の長期ビジョンを見据え、新たな中期経営計画「PROGRESSIVE PLUS 2027」(計画実施期間:2025~2027年度)を策定しました。基本方針は「筋肉質で持続可能な高利益体質の確立」です。
この3年間は「質の向上」に舵を切り、筋肉質な企業体質へと転換していきます。「質の向上」とは、エスペックの経営力、商品力、技術力、製造力、顧客提案力、人材力といったあらゆる内部能力を高めることと定義しています。目標は下記のとおりですが、特に重視しているのは「営業利益率15.0%」と「ROE12.0%以上」です。過去に達成したことのない高い目標に挑戦することで、この3年間を次なる成長の足掛かりとし、持続的な成長を目指します。
「PROGRESSIVE PLUS 2027」では、企業価値向上に向けて、事業戦略、財務資本戦略、非財務戦略(ESG)の3つの戦略を推進し、積極的な成長投資と株主還元を行っていきます。

■「PROGRESSIVE PLUS 2027」 基本方針・目標
筋肉質で持続可能な高利益体質の確立

質の向上と利益成長により「筋肉質な企業」となることで持続的な企業価値向上を目指す

■ターゲット市場

AI半導体、自動運転、衛星通信分野

■中期目標

2027年度

売上高 700億円
営業利益 105億円
営業利益率 15.0%
当期純利益 76億円
ROE 12.0%以上

※想定レート(米ドル)145円

■「PROGRESSIVE PLUS 2027」 3つの戦略

AI半導体・自動運転・衛星通信分野をターゲットに事業戦略を推進

ターゲット市場は、AI半導体・自動運転・衛星通信分野です。これらの市場は、今後、先端技術の実用化に向けて試験需要が拡大すると見込んでいます。また、このようなエレクトロニクス市場は、すでに多くのお客さまに納入実績のある当社にとって自動車に並ぶ大きな市場です。そして、これら先端技術分野における当社の提供価値は「先端技術の実用化に向けた高い信頼性、耐久性などの品質確保」です。AI半導体や自動運転分野では、半導体の高集積化、自動運転に搭載されるセンサなどの高性能化に伴う技術課題の解決に寄与したいと考えています。衛星通信分野では、米国での商用衛星通信に関する開発や国内の民間事業者による小型衛星通信事業の開発に貢献していきます。AI半導体や衛星通信は社会インフラ、自動運転は人命に関わることから、さまざまな試験が必要であり、当社の事業機会はさらに広がると考えています。今後も環境試験事業を通じて、社会の安全・安心や信頼性の確保に貢献していきます。

1 事業戦略

新たな価値を創出し、先端技術分野の試験ニーズ獲得へ

中期目標の達成に向けて、装置事業戦略では、主に環境試験器においてターゲット市場の試験ニーズを多彩な製品群、カスタム対応力、新製品開発により獲得することで、高水準な売上高を維持したいと考えています。また、新しい試験ニーズを獲得するため、研究開発投資を拡大し、製品ラインアップ拡充と商品価値向上に注力していきます。
グローバル戦略では、日本・米国・中国を利益率向上を重視するエリア、インド・韓国・ASEANを売上高拡大を目指すエリア、欧州・台湾を先端技術分野のニーズ獲得を目指すエリアと位置付け、グループの総合力を活かした活動を展開し各エリアにて競争優位性を確立していきます。
モノづくり戦略としては、モノづくりの高効率化に向けて、AI・IoTを活用し、京都府の福知山工場の省力化・自動化を推進していきます。具体的には、デジタル技術の活用により全プロセスがつながるバリューチェーンの最適化を図ります。また、内製化の拡大による製品リードタイムの短縮や、DXによる人の能力を最大限に発揮する工場へのリノベーションなどに取り組んでいきます。
サービス事業戦略では、受託試験事業において、2025年2月に開設した「あいち次世代モビリティ・テストラボ」を中心に収益拡大を目指します。アフターサービス事業においては、労働人口の減少により装置のメンテナンスなどを外部に委託する傾向が強まっています。また、製品を修理するサービスから、点検校正・保守契約といった予防保全サービスへとお客さまのニーズがシフトしています。IT・デジタル技術の活用により、装置の遠隔監視といったサービスを拡張し、顧客の課題を解決する高品質なサービスを提供していきます。
将来の収益の柱となる新たな事業創出に向けては、新規事業戦略において、CAEに関連したサーマルソリューションサービスや食品機械事業の拡大に取り組みます。サーマルソリューションサービスでは、熱変形計測システム・熱画像解析システムの提供や受託計測サービスにより、CAEの精度向上に貢献し、お客さまの開発期間の短縮に寄与していきたいと考えています。

※CAE:Computer Aided Engineering コンピューターを用いて製品の設計や開発を支援する技術

■エリア別ターゲット市場

2 財務資本戦略

創出したキャッシュを成長投資と株主還元に積極的に配分

次に財務資本戦略では、「資本コストや株価を意識した経営」に向けて、総資産の効率化とキャッシュ・アロケーション方針に基づく株主還元の実施、IR活動の強化に取り組んでいきます。事業戦略による営業利益率の向上と、棚卸資産の適正化や売上債権の圧縮といった総資産の効率化によりキャッシュを創出し、成長投資と株主還元に積極的に配分していきます。成長投資としては、前中期経営計画と同等の95億円を計画しています。主にモノづくりの高効率化に向けた投資として福知山工場の生産設備の刷新やリノベーション、グローバル拠点の充実、基幹システムの刷新を進めていきます。研究開発費は約1.3倍(36億円→48億円)とし、社員の教育投資も約1.2倍(3.6億円→4.3億円)とする計画です。
株主さまへの利益還元としては、中期経営計画策定を契機に株主還元強化の方針をより明確にするため配当基本方針を改定し、名称も株主還元方針に変更しました。30%であった配当性向を40%に引き上げ、自己株式取得も機動的に行うこととしました。また、当中期経営計画期間は3年間累計で総還元性向を50%以上とし、減配は行わないこととしました。IR活動では、株式市場での評価向上と経営強化に向けて、株主・投資家さまとの対話の充実に取り組んでいきます。

関連ページ:
■キャッシュ・アロケーション方針

3 非財務戦略(ESG)

人的資本の最大化に向けた取り組みを推進

企業価値の向上に向けては、財務的側面だけでなく、非財務的側面(ESG)への取り組みも不可欠です。中でも、私が特に重要視しているのが「人的資本」です。会社にとって「人」が中心であり、「人」重視の経営こそが会社発展の原動力だと考えているからです。 当社の人的資本の最大化に向けた取り組みは下図の通りですが、「PROGRESSIVE PLUS 2027」では特に、経営の基盤となる人・組織の力を高めるため、人材の獲得と育成の両面での取り組みを強化するとともに、オープンなコミュニケーションを促進し、従業員の働きがいの創出とエンゲージメントの向上を図ります。また、当社は、ダイバーシティ&インクルージョンに継続して取り組んでいます。2025年4月の女性管理職比率は9.8%となり、前中期経営計画の目標である10%をほぼ達成することができました。新中期経営計画では、2027年度目標を20%以上としました。引き続き、多様な社員が活躍する活気あふれる組織を目指して取り組んでいきます。
環境への取り組みでは、地球温暖化対策と生物多様性保全を重点テーマとして活動を推進しています。2024年度は、環境試験器のグローバルスタンダードモデルである恒温(恒湿)器「プラチナスJシリーズ」において、消費電力を最大70%低減したECOタイプを発売しました。また、研究開発拠点「神戸R&Dセンター」が全国みどりの工場大賞の「経済産業大臣賞」を受賞できたことも嬉しいニュースでした。今後は、2026年度から2027年度までの第8次環境中期計画PlusⅡの策定を予定しており、環境への取り組みをさらに加速させていきたいと考えています。また、ガバナンスにおいては、グループガバナンスやリスクマネジメントの強化に加え、人権方針の策定やハラスメント防止などに取り組んでいきます。

■人的資本の最大化に向けた取り組み

当社は「PROGRESSIVE PLUS 2027」でのさまざまな戦略・施策を通じて、筋肉質で持続可能な高利益体質への転換を図り、10年先も環境試験の世界的トップランナーであり続けたいと考えています。引き続きご支援を賜りますよう、心からお願い申しあげます。

2025年10月
代表取締役 執行役員社長 荒田 知

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