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TNFD提言に基づく
自然関連財務情報開示

<エスペックTNFDレポート2025>

2025年9月公開

1.開示要件

本レポートは、エスペックグループの自然関連情報をTNFD提言に沿ってステークホルダーの皆様に開示することを目的としています。
TNFD提言では、開示における推奨事項として、「ガバナンス」「戦略」「リスクとインパクトの管理」「測定指標とターゲット」の4つの柱と、これら4つの柱にまたがる6つの「一般要件」が提示されました。
本項では、本レポートにおける一般要件への対応を説明します。

■6つの一般要件

表1:一般要件

マテリアリティの適用 自然関連課題に起因して想定される財務インパクト・及び事業活動が地域社会に与える著しいインパクトを考慮し、マテリアルな項目を選定しました。
開示のスコープ 製造、販売などの直接操業を評価し、自然との関わりが大きい事業を中心に開示しています。
自然関連課題がある地域 自社の世界各地の事業拠点を対象に、生物多様性重要度や水リスクなどの公開データを用いて評価し、マテリアルな自然関連課題がある可能性が高い事業・地域を特定しました。
他のサステナビリティ関連の開示との統合 本レポートではTNFD提言に沿った自然関連情報のみを開示し、TCFD提言に沿った気候関連情報はウェブサイトで開示しています。自然資本と気候変動との相互影響を考慮し、気候関連情報開示との統合を今後検討する予定です。
考慮する対象期間 定量情報の対象期間は、2024年4月1日~2025年3月31日です。取り組みや進捗に関する情報は、これらの期間を超えて開示しています。自然関連課題については短期(2028年末)、中期(2030年末)、長期(2050年末)の視点で検討しました。
先住民族、地域社会と影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント エスペックグループでは、ステークホルダー(従業員・顧客・株主・取引先・地域社会)とのエンゲージメントを大切にしています。各ステークホルダーとの対話を重視し、価値交換性を高めるために重要なことは何かを常に考えながら活動し、お互いにとってより良い関係を築いています。

2.ガバナンス

●取締役会による監督

エスペックグループは、自社の自然関連の依存、インパクト・リスク・機会とその対応については、環境管理部で協議し、全社環境管理委員会で承認しています。また、ステークホルダーの人権尊重へのコミットメントを果たす上で重要な事項については、サステナビリティ推進本部にて協議・決定しています。それらの内容は必要に応じて、執行役員会等を通じて取締役会に付議・報告されます。

●経営陣の役割・管理プロセス

全社環境管理委員会は、環境に関する統括責任者であるエスペックの代表取締役 執行役員社長を委員長、環境管理担当役員(取締役)を副委員長として、四半期に1度開催されます。
ここで協議される環境経営(サステナビリティ)に関するリスク・機会及び対応は、重要性に応じて執行役員会に付議・報告されます。執行決定された事項はサステナビリティ推進本部 環境管理部が推進します。環境管理部はグループ横断的なリスク・機会を特定し、グループ内への浸透を図ります。また、環境管理担当役員に定期的に報告し、全社環境管理委員会に四半期に1度の頻度で付議・報告します。重要なリスクは、環境管理担当役員の判断のもと、リスク管理委員会に報告され対応の検討を行い、リスク管理委員会の委員長(取締役)から取締役会に報告されます。

●人権方針・エンゲージメント

エスペックグループは、創業当時から脈々と伝わる当グループの価値観を体系的にまとめ、あらゆる意思決定や活動のよりどころとなる企業理念「THE ESPEC MIND」を制定しています。
また、この「THE ESPEC MIND」の思想をベースに、エスペックに所属するすべての役員・従業員に適用する企業行動原則と行動基準を具体的に明記した「エスペック行動憲章・行動規範」を制定し、人権尊重への取り組みを推進しています。

3.自然資本関連の依存と影響

本章では、Global Canopy、UNEP FI、UNEP-WCMCが提供するツール「ENCORE」を用いて、事業分類ごとに自然資本への依存と影響を判定した結果について説明します。

エスペックグループでは、主力事業である装置事業(環境試験器等の製造・販売)に加え、サービス事業(アフターサービス・エンジニアリング・受託試験・レンタル)、植物育成装置事業、環境保全事業(森づくり、水辺づくり、都市緑化)を展開しています。

グラフ:事業別売上高構成比

装置事業
  • 環境試験器
  • エナジーデバイス装置
  • 半導体関連装置
サービス事業
  • アフターサービス・エンジニアリング
  • 受託試験・レンタル
その他事業
  • 環境保全
    森づくり・水辺づくり・都市緑化など
  • 植物育成装置
    植物工場、研究用育苗装置など

図2:売上高構成比
(2024年度)

1.装置事業(売上高構成比85%)

環境試験器等の製造・販売を行う当グループの中核事業です。エスペックのコア技術は、環境因子を精密に制御しあらゆる環境を再現する「環境創造技術」であり、それを用いた環境試験器は先端技術分野における技術や製品の実用化において必要とされています。製造拠点は日本、アメリカ、中国、韓国にあります。

2.サービス事業(売上高構成比12%)

環境試験器のメンテナンス・受託試験・機器レンタル等を行う事業です。お客さまに納品した環境試験器が性能を発揮し続けられるための定期的なメンテナンスを提供すると共に、環境試験器での受託試験、環境試験器のレンタルを行っています。受託試験拠点は日本、中国、タイにあります。

3.その他:植物育成装置事業・環境保全事業(売上高構成比3%)

エスペックグループのその他事業は、エスペックミック株式会社(以下、エスペックミック)が担っています。エスペックミックは、植物工場の販売や自然再生をメイン事業としており、当グループの中で自然との関わりが最も深い事業です。

  • 植物育成装置事業:1万株を1日で生産する大規模自動化植物工場から、室内インテリアにも使える垂直型屋内栽培システムまで、幅広い規模の設備を提供しています。
  • 環境保全事業:在来種を用いて、森づくり(企業の森、工場・店舗緑地などでの植樹)、水辺づくり(河川、水路、湖沼、ため池、ビオトープなどの緑化)、都市緑化、在来種の苗木づくりなどを行っています。

これらの各事業における活動内容を整理し、国際標準産業分類(International Standard Industrial Classification of All Economic Activities(以下ISIC))により、表2のようにセクターを特定しました。

表2:エスペックグループの事業と
ISICによるセクター分類

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エスペック事業区分 ISICによるセクター分類
大分類 中分類 概要 大分類 中分類 小分類 細分類
製品 製品製造・
販売
機器製造 製造業 コンピュータ、電子製品、光学製品製造業 測定、試験、操縦及び制御装置製造業;時計製造業 測定、試験、操縦及び制御装置製造業
サービス レンタル・
リセール
レンタル・
リセール
管理・支援サービス業 物品賃貸・リース業 その他の機械器具・有形財賃貸・リース業 その他の機械器具・有形財賃貸・リース業
アフター
サービス
修理・
メンテナンス
製造業 機械器具修理・設置業 金属製品・機械器具修理業 電気機器修理業
設置 製造業 機械器具修理・設置業 産業用機械器具設置業 産業用機械器具設置業
受託試験 受託試験 専門、科学及び技術サービス業 建築・エンジニアリング業及び技術試験・分析業 技術試験・分析業 技術試験・分析業
その他 植物育成装置 植物工場・
施設園芸
農林漁業 作物・動物生産、狩猟業及び関連サービス活動 多年生作物の栽培 その他の多年生作物の栽培
環境保全 水辺づくり・
森づくり
農林漁業 作物・動物生産、狩猟業及び関連サービス活動 植物増殖 植物増殖
農林漁業 林業及び伐採業 林業支援サービス業 林業支援サービス業
管理・支援サービス業 建物・景観サービス業 景観手入れ・維持サービス業 景観手入れ・維持サービス業
社会貢献活動 エスペック
50年の森
農林漁業 林業及び伐採業 造林その他の林業活動 造林その他の林業活動

次に、このセクター分類を用いてENCOREにより各事業の自然資本に関する依存と影響を評価しました。

●自然資本関連のヒートマップ(ENCORE版)

ENCOREでの判定は、世界的な平均値を用いて行われ、評価結果は自然資本への依存・影響のそれぞれにおいて、「非常に高い(VH: Very High)」、「高い(H: High)」、「中程度(M: Middle)」、「低い(L: Low)」「非常に低い(VL: Very Low)」の5段階で示されます。

ENCOREによる評価の結果は図3、図4の通りです。

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エスペック事業区分 ENCOREセクター区分 自然への依存
供給サービス 調整サービス 文化的サービス
大分類 中分類 概要 ISIC細分類 水供給 バイオマス供給 受粉 生物
エネルギー
水質浄化 遺伝子
材料
土壌質
調整
固体
廃棄物
浄化
土壌・
土砂
保持
希釈 生物
制御
空気
濾過
洪水
緩和
暴風雨
緩和
水流
調整
地球規模
気候調整
局所的
気候
調整
繁殖地個体数及び生息地維持 騒音
減衰
感覚的
影響緩和
降雨
パターン
調整
レクリエーション 視覚的
アメニティ
教育、
科学、
研究
精神的、
芸術的、
象徴的
製品 製品製造・
販売
機器製造 測定、試験、操縦及び
制御装置製造業
M - - - M - - L L L - VL M M M VL L - VL VL VL - - - -
サービス レンタル・
リセール
レンタル・
リセール
その他の機械器具・
有形財賃貸・リース業
VL - - VL - - - - VL - - - M M L VL L - - - VL VH VH VH -
アフター
サービス
修理・
メンテナンス
電気機器修理業 M - - - - - - - L L - VL M M M VL L - VL VL VL - - - -
設置 産業用機械器具
設置業
M - - - - - - - M - - VL M M M VL L - VL VL VL - - - -
受託試験
受託試験 技術試験・分析業 L - - - - - - - VL - - - L M L VL L - VL VL - - - VH -
その他 植物育成
装置
植物工場・
施設園芸
その他の
多年生作物の栽培
H VH VH H VH VH VH M VH M H M H H H VH VH VL - - VH - - - -
環境保全 水辺づくり・
森づくり
植物増殖
VH VH H M VH VH H M VH M H M H H VH H VH H - - M - - VH VH
林業支援
サービス業
H M - L VH M - VL M - L - VL VL M VL M - - - VH - - - -
景観手入れ・
維持サービス業
M - VL - VH - M L H M M M M M M M M - - - M - VH VH VH
社会貢献
活動
エスペック
50年の森
造林その他の林業活動 H VH M L VH VH VH M VH - H M H M M VH VH H - - VH - - - -

図3:各事業の自然資本への依存に関する
ヒートマップ(ENCORE版)

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エスペック事業区分 ENCOREセクター区分 自然へのインパクト
土地・淡水域・海洋利用変化 気候変動 資源利用/回復 汚染/汚染除去 侵略的
外来種
大分類 中分類 概要 ISIC細分類 土地利用
面積
淡水利用
面積
海底利用
面積
GHG
排出
水使用量 その他の生物資源の
採取
その他の
非生物資源の採取
固形
廃棄物
非GHG
大気汚染
物質
水と土壌への有毒汚染物質排出 水と土壌への栄養汚染物質排出 攪乱 外来種の
導入
製品 製品製造・
販売
機器製造 測定、試験、操縦及び
制御装置製造業
L - - M M - - L H M - M -
サービス レンタル・
リセール
レンタル・
リセール
その他の機械器具・
有形財賃貸・リース業
L L L VL L - - VL - L L L L
アフター
サービス
修理・
メンテナンス
電気機器修理業 L - L L M - - L M M - M -
設置 産業用機械器具
設置業
L - M M M - - L M L - VH L
受託試験
受託試験 技術試験・分析業 M - - VL L - - VL VL VL VL VL -
その他 植物育成
装置
植物工場・
施設園芸
その他の
多年生作物の栽培
H H - M H - - H M H H M H
環境保全 水辺づくり・
森づくり
植物増殖
H H - M VH - - H M H H M H
林業支援
サービス業
- - - M M - - L L M - M M
景観手入れ・
維持サービス業
- - - VL L VL L VL VL M H - M
社会貢献
活動
エスペック
50年の森
造林その他の林業活動 VH - - - M - - L VH H H H H

図4:各事業の自然資本への影響に関する
ヒートマップ(ENCORE版)

●自然資本関連のヒートマップ(エスペック版)

前述のように、ENCOREの判定には世界的な平均値が用いられていますが、それらは必ずしも当社事業に当てはまるわけではありません。そのため、判定に用いられている前提条件と、当社事業の差異を考慮し、当社判断において一部の判定を見直しました。

見直した評価の結果は図5、図6の通りです。

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エスペック事業区分 ENCOREセクター区分 自然への依存
供給サービス 調整サービス 文化的サービス
大分類 中分類 概要 ISIC細分類 水供給 バイオマス供給 受粉 生物
エネルギー
水質浄化 遺伝子
材料
土壌質
調整
固体
廃棄物
浄化
土壌・
土砂
保持
希釈 生物
制御
空気
濾過
洪水
緩和
暴風雨
緩和
水流
調整
地球規模
気候調整
局所的
気候
調整
繁殖地個体数及び生息地維持 騒音
減衰
感覚的
影響緩和
降雨
パターン
調整
レクリエーション 視覚的
アメニティ
教育、
科学、
研究
精神的、
芸術的、
象徴的
製品 製品製造・
販売
機器製造 測定、試験、操縦及び
制御装置製造業
M - - - M - - L L L - VL M M M VL L - VL VL VL - - - -
サービス レンタル・
リセール
レンタル・
リセール
その他の機械器具・
有形財賃貸・リース業
VL - - VL - - - - VL - - - M M L VL VL - - - VL - - - -
アフター
サービス
修理・
メンテナンス
電気機器修理業 M - - - - - - - L L - VL M M M VL L - VL VL VL - - - -
設置 産業用機械器具
設置業
M - - - - - - - M - - VL M M M VL L - VL VL VL - - - -
受託試験
受託試験 技術試験・分析業 L - - - - - - - VL - - - L VL L VL VL - VL VL - - - VH -
その他 植物育成
装置
植物工場・
施設園芸
その他の
多年生作物の栽培
VL - - - VL VL H M - M - M H M - H - VL - - VL - - - -
環境保全 水辺づくり・
森づくり
植物増殖
VH L VL M VH VH VH M VL M H VL VL H - VH VH VH - - VH - - VH -
林業支援
サービス業
VH M - L VH M - VL M - L - VL VL M VL M - - - VH - - - -
景観手入れ・
維持サービス業
M - VL - VH - M L VH M M M M M M M M - - - M - VH VH -
社会貢献
活動
エスペック
50年の森
造林その他の林業活動 VH VH M L VH VH VH M VH - H M H M M VH VH VL - - VH - - - -

図5:各事業の自然資本への依存に関する
ヒートマップ(エスペック版)

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エスペック事業区分 ENCOREセクター区分 自然へのインパクト
土地・淡水域・海洋利用変化 気候変動 資源利用/回復 汚染/汚染除去 侵略的
外来種
大分類 中分類 概要 ISIC細分類 土地利用
面積
淡水利用
面積
海底利用
面積
GHG
排出
水使用量 その他の生物資源の
採取
その他の
非生物資源の採取
固形
廃棄物
非GHG
大気汚染
物質
水と土壌への有毒汚染物質排出 水と土壌への栄養汚染物質排出 攪乱 外来種の
導入
製品 製品製造・
販売
機器製造 測定、試験、操縦及び
制御装置製造業
L - - M M - - L L M - M -
サービス レンタル・
リセール
レンタル・
リセール
その他の機械器具・
有形財賃貸・リース業
- L - VL L - - M - L - L -
アフター
サービス
修理・
メンテナンス
電気機器修理業 L - L L L - - L M M - M -
設置 産業用機械器具
設置業
L - M M M - - L M L - M L
受託試験
受託試験 技術試験・分析業 L - - VL L - - VL VL VL - VL -
その他 植物育成
装置
植物工場・
施設園芸
その他の
多年生作物の栽培
- VL - - VL - - VL VL VL VL M -
環境保全 水辺づくり・
森づくり
植物増殖
VL VL - VL M - - VL M L VL M M
林業支援
サービス業
- - - M M - - L L M - M M
景観手入れ・
維持サービス業
- - - VL L VL L VL VL M VL - M
社会貢献
活動
エスペック
50年の森
造林その他の林業活動 VL - - - L - - L VL VL VL L VL

図6:各事業の自然資本への影響に関する
ヒートマップ(エスペック版)

自然資本への依存に関しては、「非常に高い」と評価したのは、サービス事業の受託試験において1項目、その他事業の環境保全事業において16項目及び社会貢献活動において9項目でした。また、「高い」と評価したのは、全てその他事業であり、植物工場において3項目、環境保全事業において2項目及び社会貢献活動において2項目でした。

自然資本への影響に関しては、「非常に高い」「高い」と評価した項目はありませんでした。

以下、依存について各事業において「非常に高い」「高い」と評価した項目を記します。

1. 装置事業における自然資本への依存

「非常に高い」、「高い」と評価した項目はありませんでした。

2. サービス事業における自然資本への依存

受託試験のみ、文化的サービスの「教育、科学、研究サービス」を「非常に高い」と評価しました。これは、受託試験における試験条件が、試験対象機器が使用される自然環境の範囲を参照して設定されるため、その変化や新たな使用環境などについての研究を継続し、知見を蓄積することが必須であることによります。「高い」と評価したものはありませんでした。

3. その他:植物育成装置事業・環境保全事業における自然資本への依存

水辺づくり・森づくりにおいて供給サービス1項目(「水供給」)・調整サービス8項目(「水質浄化」「遺伝子材料」「土壌質調整」「土壌・土砂保持」「地球規模気候調整」「局所的気候調整」「繁殖地個体数及び生息地維持」「降雨パターン調整」)・文化的サービス2項目(「視覚的アメニティ」「教育、科学、研究サービス」)を「非常に高い」、調整サービス2項目(「生物制御」「暴風雨緩和」)を「高い」と評価しました。
また、エスペック50年の森において、供給サービス2項目(「水供給」「バイオマス供給」)、調整サービス7項目(「水質浄化」「遺伝子材料」「土壌質調整」「土壌・土砂保持」「地球規模気候調整」「局所的気候調整」「降雨パターン調整」)を「非常に高い」、調整サービス2項目(「生物制御」「洪水緩和」)を「高い」と評価しました。

ENCOREにおいて「非常に高い」「高い」と判断された項目のうち、当社判断によって評価を下げたもの、また、ENCOREの評価から上げて「非常に高い」「高い」としたものについて、その理由とともにまとめました。

表3:自然資本への依存における評価変更理由

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エスペック事業分類 自然への依存 評価変更理由
大分類 中分類 概要 要因
サービス レンタル・
リセール
レンタル・
リセール
レクリエーション関連 当該事業は当該生態系サービスを利用していないことから、「非常に高い」を「-(対象外)」にした。
視覚的アメニティ 当該事業は当該生態系サービスを利用していないことから、「非常に高い」を「-(対象外)」にした。
教育、科学、研究 当該事業は当該生態系サービスを利用していないことから、「非常に高い」を「-(対象外)」にした。
その他 植物育成装置 植物工場・
施設園芸
水供給 利用しているのは水道水であり、その元となる河川等からの取水に現在制限は無いが、将来的にはその可能性がゼロとは言えないことから、「高い」から「非常に低い」に下げた。
バイオマス供給 バイオマスは利用していないことから、「非常に高い」を「-(対象外)」にした。
受粉 生物による受粉は行っていないことから、「非常に高い」を「-(対象外)」にした。
生物による
エネルギー
当該事業は当該生態系サービスを利用していないことから、「高い」を「-(対象外)」にした。
水質浄化 利用しているのは人工的に浄化された水道水であるが、取水する河川等における水質浄化の影響がゼロとは言えないことから、「非常に高い」から「非常に低い」に下げた。
遺伝子材料 特定のメーカーで生産された種のみを利用しており、天然の種を利用していないことから、「非常に高い」から「非常に低い」に下げた。
土壌質調整 水耕栽培であり土壌利用は少ないが、特定地域の軽石に依存していることから、「非常に高い」から「高い」に下げた。
土壌・土砂保持 室内での植物生産であるため、当該生態系サービスは利用していないことから、「非常に高い」を「-(対象外)」にした。
生物制御 室内での植物生産であり、当該生態系サービスは利用していないことから、「高い」を「-(対象外)」にした。
暴風雨緩和 室内での植物生産においては当該生態系サービスは利用していないが、輸送時には悪天候でないことが必要となるため、「高い」から「中程度」に下げた。
水流調整 水道水を利用しており、当該生態系サービスは利用していないことから、「高い」を「-(対象外)」にした。
地球規模気候調整 屋内植物工場は外部の気候に依存しないが、屋外植物工場は室内空調のコントロールにおいて一定の気候条件に依存することから、「非常に高い」から「高い」に下げた。
局所的気候調整 室内での植物生産であるため、当該生態系サービスは利用していないことから、「非常に高い」を「-(対象外)」にした。
降雨パターン調整 利用しているのは水道水であるが、取水する河川等の水量に対する影響がゼロとは言えないことから、「非常に高い」から「非常に低い」に下げた。
環境保全 水辺づくり・
森づくり
バイオマス供給 育苗において、種や苗は必要であるものの、他のバイオマスは利用していないため、「非常に高い」から「低い」に下げた。
受粉 育苗している草木には虫媒花も含まれているが、果実育成や種子採取を意図していないことから、「高い」から「非常に低い」に下げた。
土壌質調整 圃場でのポット苗生産には購入した土を利用しており、販売元が採取している土壌の質に依存しているため、「高い」から「非常に高い」に上げた。
土壌・土砂保持 圃場は、区画整備された農地の一角にあり、人工マットによる浸食防止を施した上で育苗しており、当該生態系サービスへの依存は非常に低いと考え、「非常に高い」から「非常に低い」に下げた。
洪水緩和 育苗している圃場は洪水のリスクが低い場所であるため、「高い」から「非常に低い」に下げた。
水流調整 水道水を利用しており、当該生態系サービスは利用していないことから、「非常に高い」を「-(対象外)」にした。
地球規模気候調整 圃場による育成状況や、提供した森・水辺の生育に気候調整は大きく依存しているため、「高い」から「非常に高い」に上げた。
繁殖地個体数及び生息地維持 地域性に配慮した森づくりには、樹木・草本の特定について特定の生息地からの安定した苗木や種子が必須であることから、「高い」から「非常に高い」に上げた。
降雨パターン調整 森づくりでの苗木の成長や水辺づくりでの自然充水を雨水に頼っているため、「中程度」から「非常に高い」に上げた。
精神的、芸術的、象徴的 当該事業は当該生態系サービスを利用していないことから、「非常に高い」を「-(対象外)」にした。
水辺づくり・
森づくり
(サービス)
精神的、芸術的、象徴的 当該事業は当該生態系サービスを利用していないことから、「非常に高い」を「-(対象外)」にした。
社会貢献活動 エスペック
50年の森
水供給 森づくりには雨水による水供給が必須であることから、「高い」から「非常に高い」に上げた。
繁殖地個体数及び生息地維持 新規造林であり、生態系の回復には長い時間がかかるため、現時点では当該生態系サービスへの依存は非常に低いと考え、「高い」から「非常に低い」に下げた。

表4:自然資本への影響における評価変更理由

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エスペック事業分類 自然への影響 評価変更理由
大分類 中分類 概要 要因
製品 製品製造・
販売
機器製造 非温室効果ガス大気汚染物質 当社の製造工場は所在地の環境法律を遵守しており、汚染物質の排出による影響は低いと考え、「高い」から「低い」に下げた。
サービス アフターサービス 設置 妨害(攪乱) 当社の製造工場では、所在地の環境法律を遵守しており、建物内に設置していることから、作業時の自然環境への騒音・光害などの攪乱は抑えられていると考え、「非常に高い」から「中程度」に下げた。
その他 植物育成装置 植物工場・
施設園芸
土地利用面積 室内での植物生産であり、農地を利用していないことから、「高い」を「-(対象外)」にした。
淡水利用面積 利用しているのは水道水であるが、河川等から取水しているため影響がゼロとは言えないことから、「高い」から「非常に低い」に下げた。
水使用量 利用しているのは水道水であり、現在は使用量に制限は無いが、将来の影響がゼロとは言えないことから、「高い」から「非常に低い」に下げた。
固形廃棄物 所在地の環境法律を遵守しており、固体廃棄物の管理・処理による影響は十分に抑えられていると考え、「高い」から「非常に低い」に下げた。
水と土壌への
有毒汚染物質排出
所在地の環境法律を遵守しており、有毒汚染物質の排出は十分に抑えられていると考え、「高い」から「非常に低い」に下げた。
水と土壌への
栄養汚染物質排出
自主基準により施肥を最小限にしているため、栄養汚染物質の排出は十分に抑えられていると考え、「高い」から「非常に低い」に下げた。
外来種の導入 室内での植物生産であり、外来種の導入・拡散は無いことから、「高い」を「-(対象外)」にした。
環境保全 水辺づくり・
森づくり
(育苗)
土地利用面積 圃場による土地利用は、1か所かつ非常に限定した面積であるため、「高い」から「非常に低い」に下げた。
淡水利用面積 利用しているのは水道水であるが、河川等から取水しているため影響がゼロとは言えないことから、「高い」から「非常に低い」に下げた。
水使用量 利用しているのは水道水であり、現在は使用量に制限は無いが、将来の影響がゼロとは言えず、また育苗には一定量の水が必要であることから、「非常に高い」から「中程度」に下げた。
固形廃棄物 所在地の環境法律を遵守しており、固体廃棄物の管理・処理による影響は十分に抑えられていると考え、「高い」から「非常に低い」に下げた。
水と土壌への有毒汚染物質排出 自主基準により農薬使用は外来生物の駆除のみに制限しており、有毒汚染物質の排出は十分に抑えられていると考え、「高い」から「低い」に下げた。
水と土壌への栄養汚染物質排出 自主基準により施肥を最小限にしているため、栄養汚染物質の排出は十分に抑えられていると考え、「高い」から「非常に低い」に下げた。
外来種の導入 地域性に配慮した自然再生を行う事業であり、外来種を導入することは無いが、作業員の靴や衣類に付着した生物を非意図的に導入する可能性はゼロではないため、「高い」から「中程度」に下げた。
水辺づくり・森づくり
(サービス)
水と土壌への栄養汚染物質排出 自主基準により施肥を最小限にしているため、栄養汚染物質の排出は十分に抑えられていると考え、「高い」から「非常に低い」に下げた。
社会貢献活動 エスペック
50年の森
土地利用面積 造林は1か所のみで3.6haと非常に限定された範囲のみであるため、「非常に高い」から「非常に低い」に下げた。
非温室効果ガス大気汚染物質 これまでは大気汚染物質を排出するような重機や農薬の散布等はしていないが、今後は使う可能性がゼロではないため、「非常に高い」から「非常に低い」に下げた。
水と土壌への有毒汚染物質排出 農薬の使用は予定していないが、将来の使用可能性がゼロではないため、「高い」から「非常に低い」に下げた。
水と土壌への栄養汚染物質排出 自主基準により施肥を最小限にしているため、栄養汚染物質の排出は十分に抑えられていると考え、「高い」から「非常に低い」に下げた。
攪乱 これまでは重機等による作業を行っておらず、夜間作業もしていないが、今後林業機器を使う可能性はあるため、「高い」から「低い」に下げた。
外来種の導入 造林・手入れイベントの参加者の靴や衣類に付着した生物を非意図的に導入する可能性はゼロではないが、地域性に配慮した森林再生を行う事業であり、イベントの頻度は年数回以下のため、「高い」から「非常に低い」に下げた。

4.リスクと機会の管理

●リスクと機会の分析

当社事業における自然関連のリスクと機会については、3章で自然への依存・影響が「非常に高い」「高い」となった項目を重要と考え、分析の対象にしました。以下に、各事業における結果を示します。

1. 装置事業における自然資本に関連するリスクと機会

自然への依存・影響を「非常に高い」、「高い」と評価した項目は無いため、分析の対象としませんでした。

2. サービス事業における自然資本に関連するリスクと機会

受託試験において文化的サービスの「教育、科学、研究サービス」のみについて依存が「非常に高い」と評価しています。これに関連するのは気象条件に関する調査・研究ですが、それらは通常の研究開発の一部であり、そのリスクと機会はサービス事業の財務上のリスク・機会に含まれます。そのため、本レポートにおいては分析の対象としませんでした。

3. その他:植物育成装置事業・環境保全事業に関連するリスクと機会

その他事業及び社会貢献についての分析結果を表5・表6に示します。その結果、物理的リスクについては、気候変動もしくは気候変動に伴って変化する自然によるリスクが大半を占めることが分かりました。また、近年加速しているネイチャーポジティブについての政策・市場動向は、競合増加によるシェア低下というリスクにつながりかねない一方で、市場競争力を維持・強化していけば事業拡大の機会となる、と分析しました。

表5:自然資本に関連するリスク

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分類 リスク項目 植物育成装置事業 環境保全事業 社会貢献
大分類 小分類 植物工場・
施設園芸
植物増殖 林業支援
サービス業
景観手入れ・
維持サービス業
エスペック
50年の森
物理的 急性 台風・洪水・旱魃などの強大化、頻発 種苗の喪失による売上減少 植樹地損壊による売上減少 顧客緑地損壊による売上減少 植樹地損壊の回復コストの増加
地域性種苗の原料採取困難による売上減少
害虫・害獣による食害 種苗の喪失や品質低下による売上減少 植栽地損壊による売上減少 顧客緑地損壊による売上減少
地域性種苗の原料採取困難による売上減少
慢性 平均気温の
上昇
育苗不良による売上減少 植栽木生育不良による売上減少 植樹地維持管理コストの増加
降水パターン
の変化
渇水による育苗不良による売上減少 植樹地維持管理コストの増加
水不足 育苗不良による売上減少 植樹地維持管理コストの増加
土壌劣化 育苗不良による売上減少 表土流出に伴う植栽地損壊による売上減少 植樹地維持管理コストの増加
生物相の変化 病害虫被害拡大による売上減少 植栽木の新規外来種被害による売上減少 地域植生の変化による既存サービス事業の継続困難 植樹地の新規外来種被害の回復コストの増加
地域性種苗の原料採取困難による売上減少
移行 評判 ステークホルダー評価 植林地からの土砂流出への対応不備による評判低下
政策
法規制
自然再生後退 自然再生の優先順位低下による売上減少
市場 市場変化・
競争拡大
競合増加/市場シェア低下による売上減少 操業地での競合劣後による市場からの排除
技術 新製品・サービス開発 省エネ・省資源化技術の劣後による市場からの排除
専門性低下 専門性の低下による売上減少 専門性の低下による売上減少 専門性の低下による売上減少

表6:自然資本に関連する機会

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分類 機会項目 植物育成装置事業 環境保全事業 社会貢献
大分類 小分類 植物工場・
施設園芸
植物増殖 林業支援
サービス業
景観手入れ・
維持サービス業
エスペック
50年の森
ビジネスパフォーマンス リスク対処からの機会 気候変動適応 植物工場需要増による売上増大 圃場分散配置による地域性種苗提供エリア拡大とリスク分散による事業継続力の強化 現地資材等を用いた表土浸食抑制技術による事業機会の創出
技術開発 自然環境の変化に適応する技術の開発による事業継続・拡大力の強化 食害抑止資材の開発による事業機会の創出 DX(ドローン等)によるコスト競争力強化
新規機会 新製品・サービス開発 提供品種の多様化による競争力強化
提案力強化による事業機会の拡大
生物調査企業との連携による事業機会の創出 事業モデル化による環境保全事業の拡大への貢献
専門力強化 専門性の高いアフターサポートビジネスの拡大
サステナビリティパフォーマンス 持続可能な自然資源の利用 ブランド力向上による事業機会拡大 ブランド力向上による事業機会拡大 ブランド力向上による事業機会拡大 ブランド力向上
生態系の保護・回復・再生 ブランド力向上による事業機会拡大 ブランド力向上による事業機会拡大 ブランド力向上による事業機会拡大 ブランド力向上

●優先地域の特定

当社事業所について、国・地域が指定する保護区及びKBA(Key Biodiversity Area)との関係性について分析しました。その結果、近隣に国定公園またはKBAが存在するのは6拠点で、いずれもオフィス機能のみであり周囲に与える環境負荷は非常に低いことから、優先地域は無いと考えました。
今後は、分析範囲をバリューチェーン全体に拡大していく予定です。

●リスクと機会の管理

今回、初めて自然関連の依存・影響、リスク・機会について分析しました。この内容は執行役員会及び取締役会に報告されました。
今後は環境中期計画の策定プロセスに組み込み、再評価を行います。また、得られたリスクに関しては、リスク管理委員会において全社リスクへの組込みと管理を行います。

5.戦略(シナリオ)

前述のように、当社の事業における自然関連のリスク・機会は、気候変動による影響が大きいことが分かっています。今回、TNFDの探索的シナリオ分析に倣い、物理的リスクとして気候変動(1.5℃ or 4℃)、移行リスクとして政策(ネイチャーポジティブ政策が加速 or 遅延)を設定しました。
シナリオの組合せとしては、
①気候変動1.5℃&ネイチャーポジティブ政策加速、②気候変動4℃&ネイチャーポジティブ政策遅延、
の2つを設定して分析しました。
以下に、各事業における結果を示します。

1.装置事業

前章と同じく、本レポートにおいてはシナリオ分析の対象としませんでした。なお、気候変動のみに関するシナリオ分析については、TCFD報告において示しています。

2.サービス事業

前章と同じく、本レポートにおいてはシナリオ分析の対象としませんでした。なお、気候変動のみに関するシナリオ分析については、TCFD報告において示しています。

3.その他:植物育成装置事業・環境保全事業

表7~10に、それぞれの事業におけるシナリオ分析結果を示します。
財務影響の大きさは、★(1億円未満)、★★(1~10億円未満)、★★★(10億円以上)で判断しました。

表7:自然資本に関連するリスクの変化と財務影響(植物育成装置事業)

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分類 リスク項目 シナリオ① シナリオ②
大分類 小分類
移行 技術 新製品・サービス開発 省エネ・省資源化技術の開発で先行できるため、市場からの排除の可能性は低い(★) 省エネ・省資源化技術の開発が追い付かなくなり、劣後による市場からの排除が進む(★★)

表8:自然資本に関連する機会の変化と財務影響(植物育成装置事業)

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分類 機会項目 シナリオ① シナリオ②
大分類 小分類
ビジネスパフォーマンス リスク
対処からの機会
気候変動
適応
気候変動は緩やかであり、植物工場需要増による売上増大も緩やかである(★) 気候変動が進むため、植物工場需要増による売上増大が進む(★★★)

表9:自然資本に関連するリスク(環境保全事業)

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分類 リスク項目 シナリオ① シナリオ②
大分類 小分類
物理的 急性 台風・洪水・旱魃などの強大化、頻発 急性リスクの発生頻度は低く、種苗生産・植樹地/緑地サービス提供への影響による売上減少はほとんど発生しない(★) 頻繁に種苗生産・植樹地/緑地サービス提供への影響が発生し、売上が大きく減少する(★★)
害虫・害獣による食害 食害被害の発生頻度は低く、種苗生産・植樹地/緑地サービス提供への影響による売上減少はほとんど発生しない(★) 食害被害が多発し、種苗生産・植樹地/緑地サービス提供への影響が発生し、売上が大きく減少する(★★)
慢性 平均気温の
上昇
平均気温の上昇は緩やかであり、種苗生産・植樹地サービス提供への影響による売上減少はほとんど発生しない(★) 頻繁に種苗生産・植樹地サービス提供への影響が発生し、売上が大きく減少する(★★)
降水パターンの変化 渇水の発生頻度は低く、種苗生産への影響による売上減少はほとんど発生しない(★) 頻繁に渇水が発生し、種苗生産への影響により売上が大きく減少する(★★)
水不足 水不足の発生頻度は低く、種苗生産への影響による売上減少はほとんど発生しない(★) 頻繁に水不足が発生し、種苗生産への影響により売上が大きく減少する(★★)
土壌劣化 土壌劣化の発生頻度は低く、種苗生産/植林地サービスへの影響による売上減少はほとんど発生しない(★) 土壌劣化が進み、種苗生産/植林地サービスへの影響により売上が大きく減少する(★★)
生物相の
変化
食害被害の発生頻度は低く、種苗生産・植樹地/緑地サービス提供への影響による売上減少はほとんど発生しない(★) 食害被害が多発し、種苗生産・植樹地/緑地サービス提供への影響が発生し、売上が大きく減少する(★★)
移行 政策
法規制
自然再生
後退
自然再生は優先されており、売上減少はほとんど発生しない(★) 自然再生の優先順位は低く、売上が大きく減少する(★★)
市場 市場変化・競争拡大 市場は拡大するが、競合も増加するため、売上が減少しうる(★) 市場はあまり拡大せず、シェアの取り合いになるため、売上は減少しうる(★)
技術 専門力維持・強化 現状の専門力による優位性を維持できるため、売上減少はほとんど発生しない(★) 自然の変化に対応した専門力を持てなくなると、売上が減少しうる(★★)

表10:自然資本に関連する機会(環境保全事業)

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分類 機会項目 シナリオ① シナリオ②
大分類 小分類
ビジネスパフォーマンス リスク
対処からの機会
気候変動
適応
気候変動は緩やかであり、圃場分散配置による地域性種苗提供エリア拡大とリスク分散による事業継続力の強化の効果は限られる(★)
気候変動が進むため、圃場分散配置による地域性種苗提供エリア拡大とリスク分散による事業継続力の強化の効果が大きい(★★★)
気候変動は緩やかであり、現地資材等を用いた表土浸食抑制技術による事業機会の創出は限られる(★) 気候変動が進むため、現地資材等を用いた表土浸食抑制技術による事業機会の創出の効果が大きい(★★)
技術開発 気候変動は緩やかであり、自然環境変化適応技術の開発、食害抑止資材の開発、DX活用による事業継続・拡大力の強化の効果は限られる(★) 気候変動が進むため、自然環境変化適応技術の開発、食害抑止資材の開発、DX活用による事業継続・拡大力の強化の効果が大きい(★★★)
新規
機会
新製品・
サービス
開発
自然再生の機運が高まるため、提供品種の多様化、提案力の強化により事業機会が大きく広がる(★★★) 自然再生の機運は低迷するため、提供品種の多様化、マーケティング力の強化による事業機会の拡大は限られる(★)
生物調査企業との連携が進み、事業機会が創出しうる(★★) 生物調査企業との連携の進展は遅く、事業機会の創出は限定的である(★)
専門力強化 専門力強化・DX化により事業機会が創出しうる(★★) 専門力強化・DX化により事業機会が創出しうる(★★)
サステナビリティ
パフォーマンス
持続可能な
自然資源の利用
自然再生の機運が高まるため、ブランド力の強化により事業機会が大きく広がる(★★) 自然再生の機運は低迷するため、ブランド力の強化による事業機会の拡大は限られる(★)
生態系の保護・回復・
再生
自然再生の機運が高まるため、ブランド力の強化により事業機会が大きく広がる(★★) 自然再生の機運は低迷するため、ブランド力の強化による事業機会の拡大は限られる(★)

これらから、シナリオ①気候変動1.5℃&ネイチャーポジティブ政策加速、シナリオ②気候変動4℃&ネイチャーポジティブ政策遅延、のどちらが当社の事業における財務影響の度合いが大きいのかに違いがあることが分かりました。そのため、今後は物理的リスクと移行リスクの動向を継続的に注視し、適時シナリオ分析を更新し、事業戦略に反映させていきます。

なお、社会貢献活動に関しては、リスクにおける費用は投資額までに限られ、機会は副次的効果であるため、分析は対象外としました。

6.指標と目標

●指標

グローバル中核開示指標について、2024年実績を示します。なお、プレースホルダーであるC4.0、C5.0については、確定次第算定を進めます。また、リスクと機会に関するグローバル中核開示指標(C7.0~C7.4)についても今後情報収集と開示に向けた検討を進めていきます。

表11:グローバル中核開示指標

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自然の変化の要因 指標 測定指標
(2024年度実績)
開示範囲
気候変動   GHG 排出量 スコープ1・2・3 1,292,432t-CO₂ 連結全社
陸/淡水/海洋
利用の変化
C1.0 総空間フットプリント ①組織が監督権を有する監督下、管理下にある総表面積 389㎞2 連結全社及びエスペック50年の森
②修復、復元された総面積 83㎞2 連結全社及びエスペック50年の森
③攪乱された総面積 0㎞2 連結全社
C1.1 陸/淡水/海洋の利用変化の範囲 報告年度に変化のあった土地面積 20㎞2  
汚染/汚染除去 C2.0 土壌に放出された汚染物質の種類別総量   2.3kg 連結全社
C2.1 廃水排出   110,118㎥ 連結全社
C2.2 廃棄物の発生と処理 総排出量 1,125t 連結全社

• 焼却処分した廃棄物(熱回収含む)

113t  

• 埋立地に送った廃棄物

17t  

• その他の廃棄物処理方法

995t  
うち、埋立が回避された重量 782t 連結全社

• 再利用
• リサイクル

361t  

• その他の再生方法

421t  
C2.3 プラスチック汚染   699t 連結全社
C2.4 温室効果ガス(GHG)以外の大気汚染物質総量   86t 連結全社
資源使用/
資源補充
C3.0 水不足の地域からの取水量と消費量   対象地域なし 連結全社
C3.1 陸/海洋/淡水から調達する高リスク天然一次産品の量 算定資料不足 連結全社

●目標

自然に関する目標については、第8次環境中期計画において設定しています。今後、次期環境中期計画の検討において、TNFDが示す開示指標との整合について検討する予定です。