プレッシャークッカー試験
試験の概要・特長
プレッシャークッカー試験とは樹脂封止された電子部品などの耐湿性を評価する目的で開発された試験方法です。
プレッシャークッカー試験は100℃以上で、かつ高密度な水蒸気雰囲気を再現し、試験槽内の水蒸気圧力を供試品の内部の水蒸気分圧よりも極端に高めることにより、供試品の内部への水分の浸入を時間的に短縮することができ、電子部品材料の耐湿評価の加速寿命試験に用いられます。
不飽和プレッシャークッカー試験(USPCT;Unsaturated Press. Test)はHAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)と呼ばれIEC 68-2-66で規格化され、電気・電子機器 部品などの環境試験方法の一つとして実施されています。
試験方法(IEC 68-2-66 より要約)
試験の概要
- 供試品の外部に生じる腐食や変形は対象外とする。
- 通常バイアス印加を行って試験する。
- 試験条件の選定は、故障モードとの相関を確認し実施する。
- 封止材料の臨界温度(ガラス転移点など)には十分注意する。
試験装置・加湿水
- 温湿度分布は±2℃、±5%rh以内とする。
- 凝縮水が供試品上へ落下しないこと。
- 槽の構成部品により供試品を劣化させたり、加湿水質を劣化させないこと。
- 試験条件の選定は、故障モードとの相関を確認し加湿水は蒸留水または脱イオン水を使用。
- 加湿水は導電率0.5MΩ/cm以下、pH6.0~7.2(at 23℃)であること。
試験設備のご紹介
プレッシャークッカー試験を行う高度加速寿命試験装置は、一定の電圧や信号を印加するバイアステストを中心に考えた機能を搭載しています。最大72ピンの試料信号端子を装備した装置をご用意しています。制御方法は「不飽和制御」「濡れ飽和制御」の2モードタイプと「乾湿球温度制御」「不飽和制御」「濡れ飽和制御」の3モードを装備したMタイプがあり、Mタイプは、国際規格IEC-60068-2-66に対応しています。
設置状況
- 高度加速寿命試験装置
主な仕様
温度制御範囲: +105~162.2℃
湿度制御範囲: 75~100%rh(温度による)
圧力範囲: 0.020~0.392Mpa (Gauge)
試料信号端子 72P(36ch)
- 中型HAST EHS-431M
従来のHAST槽には入らないサイズの試料に対応できる、従来装置に対して容量で約3倍、試験室の各寸法が1.3倍以上のHAST装置です。
今まで試験できなかった4セル太陽電池モジュールの試験にも対応します。
試料用信号として、72セット(144 ピン)を備え、以下でご紹介するAir-HAST、ワイドレンジHAST試験も可能です。
型式 | 容量(ℓ) | 試験室大きさ(mm) |
---|---|---|
EHS-431M | 130 | 514×514×580 |
EHS-221M | 46 | 355×355×426 |
EHS-411M | 18 | 255×255×318 |
その他のHAST試験のご紹介
フィールドとの相関関係における正確な試験結果の再現と最短試験時間で試験結果を得るため、標準化された試験モード(乾湿球制御、不飽和制御、濡れ飽和制御)のほかに、AirHAST試験、ワイドレンジHAST試験をご紹介します。
Air-HAST試験
従来のHASTは、IEC/JISに規定されているように、樹脂などで封止された中の電子部品の、水蒸気による耐湿性を評価する加速試験として、広く行われてきました。
市場では、試料や目的によって、水蒸気だけでなく、空気に含まれる酸素によっても、表面付近での酸化が故障に原因となる場合があります、そこで、恒温恒湿試験にも含まれる空気に注目し、HAST試験に空気を加え、表面酸化等の加速試験として提案させて頂いているのが、Air-HAST試験です。
- 試験事例
ワイドレンジHAST試験
通常の恒温恒湿槽の温湿度範囲では、温湿度が低く、試験時間がかかりすぎるが、HAST環境では温湿度が高すぎる、これら2つの試験環境の中間の環境試験を実施したい、そのニーズの対応する装置が、ワイドレンジHASTです。具体的には、100℃前後の恒温恒湿試験が実施可能です。ガラス転移温度や耐熱温度がやや低く、HAST試験が適用出来ない試料の加速試験にご利用いただけます。
- 試験事例
- ・ウィスカ加速試験
- ・塗料・照明機器材料(LED、樹脂)、太陽光パネルの加速試験(酸素が劣化要因と考えられる試験)
- ・85℃/85%rhで実施される試験との相関で、空気要因が不足する可能性がある加速試験
- ・太陽電池パネル用 部品や材料の評価試験
- ・車載部品の評価試験
- ・85℃/85%rhで実施される試験の加速試験(電子部品の寿命評価)