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Close-Up ESPEC

2015

リチウムイオン二次電池の発明者
旭化成株式会社フェロー吉野彰氏のご講演

写真:リチウムイオン二次電池の発明者旭化成株式会社フェロー吉野彰氏のご講演

「リチウムイオン二次電池 現在・過去・未来」

当社では、技術情報の共有や技術者のスキルアップ、視野・発想を広げることを目的に、技術者が自らの開発成果を発表する技術交流会を定期的に開催しています。

2015年7月に開催した技術交流会では、リチウムイオン二次電池の発明者である旭化成株式会社フェロー吉野彰氏をお招きし、特別講演を行いました。リチウムイオン二次電池の動向や今後の可能性についてわかりやすくお話しいただきました。今回の特集では、吉野氏の特別講演の内容についてご紹介します。

リチウムイオン二次電池の現状認識

リチウムイオン二次電池は、1990年代の商品化以降、さまざまな技術課題を克服してきました。現在では、エネルギー密度は約3倍に向上、価格も15分の1にまで下がりました。現在の市場規模は世界で約1兆円、その用途は携帯電話などの小型民生用がほとんどで、車載用途の普及が期待されています。

リチウムイオン二次電池の開発史と成長の背景

研究開発で直面する関門を、基礎研究は「悪魔の川」、次のステップである開発研究は「死の谷」、最後のステップである事業研究は「ダーウィンの海」と比喩することがあります。リチウムイオン二次電池の開発でもこの3つの関門に直面しました。

1980年代、ノート型パソコンなどのポータブル電子機器の本格普及に先立ち、二次電池の高容量化や小型・軽量化が求められる中、1981年にリチウムイオン二次電池の研究をスタートしました。そして、1985年にリチウムイオン二次電池の原型を完成させました。

事業として軌道に乗せるための最後の関門「ダーウィンの海」を超えるきっかけは、意外なことに外的要因によるものでした。1995年、デジタル化が進み、携帯電話の駆動電圧が低電圧化され、リチウムイオン二次電池1本で携帯電話を動かすことができるようになったのです。これをきっかけに、ポータブル電子機器へのリチウムイオン二次電池の使用が急拡大しました。開発の世界では、市場の変化をうまくとらえることができるかということがとても重要なのだと思います。

写真:講演後の質疑応答の様子〈講演後の質疑応答の様子〉
当社技術者の質問に対して、今後の開発のヒントになるような貴重なアドバイスを多数いただきました

リチウムイオン二次電池周辺でこれから起こること

未来の車社会に向けた大きな変革として、1つ目に、走行中の自動車に充電できる「移動体ワイヤレス給電」があります。ワイヤレス給電とは、無線で電力を供給する技術のことです。コードレス電話機や電動歯ブラシなどに活用されていますが、現在、電気自動車などエコカーの走行中に充電を可能とする移動式の技術が注目されています。

2つ目に「ZEV規制と2018年問題」です。米国カリフォルニア州大気資源局は、同州内で一定以上の台数を販売する自動車メーカーに対して、決められた割合を電気自動車や燃料電池車などZEV(Zero Emission Vehicle:排ガスを出さない車)にすることを義務づけています。この基準が厳しくなる2018年に向けて、クリーンエネルギーで走るZEVの開発が急がれています。最後に、「IoT (Internet of Things:“もの”のインターネット)との連動」です。IoTとは、従来個人所有していた“もの”をインターネットやクラウド上に置き、共有することによって相互に制御される仕組みのことです。自動車もIoTのターゲットとして注目されており、自動運転技術の開発が進められています。実現すれば、運転手のいらない自動車が生まれ、マイカーがなくなり、世の中の車がすべて無人タクシーになるかもしれません。これは、大きな地球環境への貢献と画期的な価格破壊につながるでしょう。IoTでなければ成し遂げられない業だと思います。

このように未来の車社会に向けて、大きな変革が起きようとしています。このような流れをつかむことが、新しい開発の成功につながるのだと思います。

写真:本社ショールームにて 旭化成株式会社 フェロー 吉野彰氏(左) 代表取締役社長 石田雅昭(右)

本社ショールームにて
旭化成株式会社 フェロー 吉野彰氏(左)
代表取締役社長 石田雅昭(右)
≪吉野 彰・よしのあきら≫
旭化成株式会社
フェロー、博士(工学)
旭化成株式会社
吉野研究室 室長
技術研究組合
リチウムイオン電池材料評価研究センター 理事長

1999年、(社)日本化学会の化学技術賞など国内外における科学技術分野の名誉ある賞を多数受賞