PROJECT


STORY

プロジェクトストーリー

あらゆる気象環境を再現し、
最先端技術分野の評価課題に挑戦気象環境を忠実に再現する「全天候型試験ラボ」の開発

神戸R&Dセンターの敷地内にある「全天候型試験ラボ」。幅6m×奥行9m×高さ3mの、自動車1台分が入る試験スペースを擁するこの大型ラボでは、自動運転技術や次世代通信技術、農作物育成技術など、最先端の技術開発に欠かせないさまざまな評価試験が行われている。
全天候(温湿度や雪、雨、太陽光、霧、風)に加え、動的気象環境※を再現する世界初の取り組みは、どのような経緯で誕生し、完成に至ったのか。エスペック内の複数の部署が連携して生まれた、この横断的プロジェクトの成功秘話を探った。
※動的気象環境(Dynamic Environments)とは、刻々と変化する気象環境のこと

PROJECT MEMBER

  • E.H

    開発本部
    開発プロジェクト

    E.H

    1986年入社

  • S.K

    神戸R&Dセンター
    管理グループ

    S.K

    2000年入社

  • S.H

    開発本部
    開発プロジェクト

    S.H

    2018年入社

1はじまり

待ったなし。
あらゆる天候に対応した試験装置の開発に
のしかかる大きな期待とプレッシャー

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近年、より一層の市場拡大が見込まれる自動車の自動運転化。各メーカーが求められるのは、安全運転を担うのに不可欠な各種センサー性能の向上だ。エスペックでは、あらゆるセンサー評価試験に対応できる全天候型(温湿度や雪、雨、太陽光、霧、風)且つ、それら天候が合わさった複合的な気象環境を再現できる試験装置の早急な開発が求められていた。
「自動運転の実現過程には、あらゆる天候下を想定した新たな試験が必要になってきます。しかし実際の屋外での試験はその時々の天候に左右されるため、定量的に行うことが困難です。お客様の求める天候条件をいつでも自由に作り出せる屋内のラボがあれば、お客様の開発を加速させることが予想できました」と、プロジェクトに招集された中心メンバーのE.Hは振り返る。
また同じくメンバーの1人であるS.Kは、「今回のプロジェクトが始まる以前に、一部のお客様から実環境化での試験の必要性を聞いていました。メンバーに選ばれた時はまずそのお客様のことが頭に浮かびましたね。ようやくご要望に応える技術開発が進められるという点でモチベーションが上がりましたし、プロジェクトの重要性も実感しました」と語る。

2困難との遭遇

どうすれば一定量の雪を
降らすことが可能なのか。
困難を極める「雪」の製作

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開発プロジェクトは2018年4月に技術開発部門のスペシャリスト3名でスタートした。最初はお客様や研究機関へのヒアリングを通して使用部品に要求される環境試験(顧客ニーズ)を調べ、技術試作製作、技術評価を何度も繰り返した。
新しい環境因子の開発は試行錯誤の連続だ。その中でも最も苦労したのは「雪」の環境だという。降雪装置はすぐ付着してしまう性質のため、時間が経過するごとに降雪量が減ってしまう。さらに水分の多いみぞれのような雪やさらさらのパウダースノウまで多くのタイプがあるため、それぞれをリアルに作り出すのは高いハードルだった。
「設計部門の技術者とも協力し、DR(設計審査や問題点の抽出と対策可否検討、プロセス確認等)を重ねました。その結果、今までの雪を作り、一時的に貯めた後に雪を降らせる方式の限界を感じ、難しいけれど顧客ニーズが実現できる雪を作り出しながら雪質を調整し、雪を降らせる方式に挑戦することを決めました」。
新しい方式に手応えを感じたE.Hらはその後も取り組みを進め、さらなる顧客ニーズのヒアリングや仕様決めを行った後、最終的な設計・製作に着手。2021年2月、ついに世界初の「全天候型試験ラボ」の完成へと至ったのである。

3ブレイクスルー

デモ試験や受託試験だけでなく
お客様の課題解決に向けた共同開発まで

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どんなに素晴らしい装置であっても、それが人々に伝わらなければ意味がない。装置設置後の運用段階からメンバーに加わったS.Hは、問い合わせのあったお客様への対応、新たな要望を組み込んだ装置改造などに奔走。学会での発表や見学会の開催といった装置のPR活動も積極的に行った。評判は上々で、全天候型試験ラボの見学に訪れたお客様のほとんどは、その後の受託試験や共同開発へと繋がっているという。
「気象環境には規格がないですし、試験方法も確立されていません。お客様ごとの課題・問題点をその都度抽出し、必要な試験とその試験を実現するための方法を考えるのは大変でしたね。また、「湿った雪」「粉雪」などと言っても人によって意味する度合いが違うので、試験を実現する過程でその言葉の認識をすり合わせるのも苦労しました」。
共通認識を得るためにお客様には出来るだけ実物・実機を見ていただき、使う言葉の定義を決めて話すように心掛けた。時には厳しい意見もいただくが、じっくりと課題に向き合う中でお客様も一緒になって解決策を議論してくれるという、嬉しい変化も経験できたとS.Hは話す。

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4さいごに

最先端技術の進化や
環境変化とともに
エスペックの挑戦は続いていく

生産、販売、設計等、さまざまな部署を巻き込んだ今回の開発プロジェクトは、エスペックにとって新たな挑戦となった。前例のない横断的な取り組みに、最初は各部門で戸惑いがあったことは否めない。しかし、膨大な作業量に対応するために遠方の制作部門が全面的に協力を申し出るなど、プロジェクトメンバー以外の多くの社員もこの取り組みに心を動かされ、一丸となって取り組んだ。社内的に新たな協力体制が築けたことは、エスペックにとって大きな成長だ。
現在もプロジェクトを進めるE.HとS.Hは、顔を見合わせてこう話す。
「社会やお客様の状況は刻々と変化し、新たな要求が生まれ続けます。例えば、ゲリラ豪雨の降雨量は今の想定より増えるかもしれないし、自動運転以外の新しい技術の試験が必要になるかもしれない。どんな新しい技術に対しても試験できるような装置に進化させていきたいですね。もちろん、今まで以上にお客様の立場で課題解決できるよう、私たち自身も進化し続けていきます」。
業界に大きなインパクトを与えることとなった全天候型試験ラボは、これからも進化を続け、多くのお客様の期待に応えていく。

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