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Close-Up ESPEC

2017

乾燥地の持続的発展に貢献
国立大学法人 鳥取大学
乾燥地研究センター」を訪問

写真:国立大学法人 鳥取大学「乾燥地研究センター」

農作物の生産性を著しく低下させ、食糧不足や貧困の加速、生物多様性の損失などを引き起こす乾燥地問題。今回の特集では、乾燥地問題の解決に向けた研究に取り組む日本唯一の研究機関、国立大学法人 鳥取大学「乾燥地研究センター」を訪問しました。乾燥地の持続的発展に貢献する研究を推進されている同センターの取り組みを紹介します。

砂丘農業の実績を活かして世界の乾燥地問題に挑む
「乾燥地研究センター」 

◆乾燥地研究センターの設立目的と主な研究について教えてください。

当センターは、1990年に全国共同利用施設として設立された乾燥地問題に組織的に取り組む国内唯一の研究機関です。我々の研究の歴史は長く、1923年より鳥取砂丘での防砂林研究・農業利用研究を行ってきました。1960年代後半から世界的に砂漠化が問題視されるようになり、1970年頃から乾燥地研究をスタートしました。以降、砂漠化や干ばつなどの解決、および人と自然の持続性の維持・向上など世界に貢献する研究を推進しています。

◆砂漠化の原因にはどのようなものがあるのですか?

写真:砂丘の上に立地する「乾燥地研究センター」の共同実験農場(圃場)遠景/奥に見える森はすべて植林によって造られている砂丘の上に立地する「乾燥地研究センター」の
共同実験農場(圃場)遠景奥に見える森は
すべて植林によって造られている

地球温暖化などの気候的要因と人為的要因があります。人為的なものとしては「過放牧・過開墾・過伐採」が大きな要因です。家畜の放牧のしすぎや畑の作り過ぎでどんどん植物が少なくなり、土地が荒れやすくなります。また、途上国ではエネルギーを木材資源に頼っている国が多く、過剰な伐採が問題になっています。さらに不適切な灌漑によって、地下水に含まれる塩類が土の表面にたまり農業ができなくなる「塩類集積」も重要です。これらにより砂漠化が進行し、食糧生産性の低下や貧困の加速などを引き起こしています。

◆日本では乾燥地問題はあまりなじみがないのですが、私たちの生活にどのような影響がありますか?

日本に乾燥地はありませんが、乾燥地問題は生活に密接に関わっています。例えば黄砂です。最近は特にPM2.5(微小粒子物質)の飛来が問題視されていますが、黄砂の発生にはモンゴルや中国の砂漠化・干ばつが大きく関わっています。また、食べ物への影響もあります。我々が日々口にする小麦などの食料は乾燥地から輸入したものがたくさんあります。生産地が被害を受けると日本の食糧問題にもつながるのです。

エスペックの環境創造技術で砂漠を再現、
乾燥ストレスに強い小麦を研究

◆乾燥地における植物の育成研究にエスペックミックの装置を多数お使いいただいていますね。

温度や湿度、光、風など乾燥地の気候を再現するエスペックミックの装置を計8基使っています。2009年に納入いただいた乾燥地環境再現実験設備では、世界最高水準である10万ルクス以上の照度を再現いただきました。

◆10万ルクス以上の照度というのは日常でも経験できる光の強さですか?

写真:亜熱帯砂漠と冷涼帯砂漠を再現できる乾燥地環境再現実験設備亜熱帯砂漠と冷涼帯砂漠を再現できる
乾燥地環境再現実験設備

装置の仕様(亜熱帯砂漠/冷涼帯砂漠)

  • 温度: 0~50℃/-15~30℃
  • 湿度: 5~90%RH/20~90%RH
  • 照度: 0~13万lx/0~12万lx

日本ではほとんど経験できないと思います。トマトなどの野菜や稲を育てるのに最低限必要な照度が5万ルクスと言われていて、10万ルクスというと海外の限られた地域だけです。アフリカなど強光にさらされる砂漠環境を人工的に再現することで、日本にいても乾燥地の研究ができるエスペックミックの装置は我々の研究の心臓部です。

◆エスペックミックの装置を用いてどのような研究をされているのか具体的に教えていただけますか?

写真:乾燥地植物気候変動応答実験設備(内部)/小麦の乾燥ストレスを実験乾燥地植物気候変動応答実験設備(内部)
小麦の乾燥ストレスを実験

乾燥地の環境ストレスに強い植物の作出に向けた栽培実験や持続的に植物を生産するためのシステムの開発などに用いています。例えば、乾燥に耐える遺伝子を探し、それを組み入れた小麦が本当に乾燥に強くなったのかをエスペックミックの装置で実験しています。乾燥に強い植物の特性を定義づけることができれば、既存の品種から有望なものを選別したり、自然交配で新しい品種を作ったりすることができます。2030年、人口増などを背景にアフリカを中心に食糧危機が来ると言われています。乾燥地でも育つ植物の作出は世界の喫緊の研究です。

◆研究するうえで大切にされていることは何ですか?

写真:センター長 山中典和 様センター長
山中典和 様

一つは乾燥地の「現場」で研究することです。現場の研究者と一緒になって何が起きているのか、どうすればいいのかを一緒に考えることです。もう一つは、先進国だからこそ備えられる最先端の研究設備を最大限活かすことです。全国共同利用施設として日本中の研究者に積極的に利用してもらいたいと思っています。

◆毎年世界の乾燥地の10~20%が砂漠化するという深刻な状況ですが、乾燥地研究センターの役割もますます重要になりますね。

日本は砂漠化対処条約という国際条約に批准しています。砂漠化は乾燥地の一番大きな問題であり、日本は国際社会の一員として、先進国として真摯に乾燥地問題に取り組む責任があります。そして、日本の乾燥地研究の中心として、研究の推進と世界への発信の役割を我々が担っています。国内外の研究者とともに乾燥地の持続可能な発展を目指していきます。

当社はこれからも事業を通じて自然環境に関わるさまざまな問題の解決に少しでも寄与できればと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。

取材にご協力いただいたみなさん

写真:左から、乾燥地研究センター 特命助教 妻鹿良亮様、センター長 教授 山中典和様/鳥取大学 技術部 農学系部門 技術職員 今井佑美様

左から、
乾燥地研究センター 特命助教 妻鹿良亮様
センター長 教授 山中典和様
鳥取大学 技術部 農学系部門
技術職員 今井佑美様

≪文部科学省 共同利用・共同研究拠点 国立大学法人 鳥取大学乾燥地研究センター≫

写真:ヤマハ株式会社

設立:1990年6月8日
住所:鳥取市浜坂1390