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省エネルギーを促進する次世代パワー半導体
実用化に向けて信頼性評価への取り組み

環境に役立つデバイスとして注目されているパワー半導体について簡単に教えていただけますか

モーターを駆動したり、蓄電池を充電したり、交流を直流電力に変換するなど電源の制御を行う半導体です。エコカーと呼ばれる電気自動車やハイブリット自動車のモーター駆動、蓄電池の充放電回路、太陽光発電用パワーコンディショナー、エアコンや冷蔵庫のインバーターなどいろいろなものに搭載されています。環境やエネルギーへの対応が重視される中、省エネに役立つデバイスとして活用されています。

菅沼研究室での研究内容について教えていただけますか

次世代のパワー半導体であるSiC素子(シリコンカーバイト)に対応する新しい材料の実装技術開発を行っています。特に、半導体素子の接合技術は重要な課題の一つであり、200℃以上高温での作動を想定した高耐熱性及び素子の高発熱を解決できる高熱伝導率を備えた接合材料の開発が必須です。これまでの技術開発では、金系はんだ合金や銀ナノペーストによる半導体チップの接合材料は耐熱性及び高熱伝導を実現しているが、コストが非常に高いため、汎用パワー半導体に適用するには難点でした。現在、純亜鉛と微量元素を加えた合金系や安価な銀フレークを新たな接合材料として提案し、SiC素子の接合に適用し欠陥のない良好な接合をえることに成功しています。

菅沼教授は30年以上前からパワー半導体の接合材料の研究をされていますね

アルミニウムとセラミックスの接合技術を作ったのは30年前。1990年代にはパワー半導体の絶縁基板の新しい接合方法を開発していました。これはアルミニウムをセラミック基板に鋳造で貼り付ける技術です。これが実用化されたパワー半導体は大手電機メーカーの信頼性試験にも難なく合格し、初代ハイブリッド自動車に搭載されました。

パワー半導体の接合材料の信頼性評価はどのように行っていますか

パワー半導体が動作する際に発生する熱が、その信頼性に大きく関わってきますので、冷熱衝撃試験は重要な試験項目です。しかしながら、従来の冷熱衝撃試験は上限温度が200℃だったため、次世代パワー半導体の高温での信頼性評価には不向きでした。そこで、エスペックに上限温度が300℃の冷熱衝撃試験装置を特注依頼しました。その試験装置を用いて、-50℃~300℃の激しい温度サイクルをかけた結果、世界ではじめて500サイクルまで劣化が無い接合技術を実現しました。
また、信頼性評価については高電流化、高温動作という状況からエレクトロマイグレーション(EM)発生も検討する必要があります。このEM評価でも装置を新たにエスペックと開発しています。

菅沼教授には当社の信頼性研究において厚くご指導いただいています。当社への期待、アドバイスをお聞かせください

エスペックさんは、このような試験装置の分野ではトップメーカーですから、これからも新しい信頼性試験に対応した評価装置を先進的に作ってほしいです。新しい技術は信頼性の評価装置がなければ世の中に波及しませんし、そこが日本の技術の強みですので、大いに期待しています。

次世代パワー半導体を評価するエスペック製品

  • パワーサイクル試験装置
  • 冷熱衝撃装置(300℃仕様)TSA-202ES-W
  • エレクトロマイグレーション評価システム

世界に先駆けた「鉛フリーはんだ」の実用化

エスペックが菅沼教授にご指導いただくきっかけとなったのは、1990年代後半から国家プロジェクトとしてスタートした「鉛フリーはんだ」実用化への参加でした。鉛は人体にも悪影響を及ぼし、鉛の入ったはんだで接合処理された家電製品が産業廃棄物として捨てられると自然環境にも悪影響を及ぼします。このため鉛を含まない鉛フリーはんだの材料開発と信頼性技術の共同研究がスタートしました。菅沼教授のリーダーシップにより、日本は世界に先駆けて全世界の電子機器の鉛フリーの実用化を果たすことができました。この評価試験にエスペックの装置が使用されました。

写真:菅沼克昭

大阪大学産業科学研究所・菅沼研究室紹介

大阪大学産業科学研究所は、新たな産業創成の源泉となる基礎科学を極め、その成果に立脚して応用科学を展開することを目的とした大阪大学付属研究所です。菅沼研究室では、ナノテクノロジーとエレクトロニクスを融合した新たな技術分野の開拓を世界に先駆けて研究されています。現在、博士課程9名、社会人博士課程3名、修士課程2名、スタッフ8名が在籍されています。

  • 写真:大阪大学産業科学研究所
  • 写真:菅沼研究室

菅沼克昭・すがぬま かつあき

大阪大学産業科学研究所 教授

東北大学工学系大学院博士課程修了。
1996年から大阪大学産業科学研究所教授。科学技術庁長官賞研究功績賞などを受賞。

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